アルバム『ジャム』レビュー

 

  ジャムが発売されてそこそこ経ち、もうすぐツアーも終わりますがみなさんいかがお過ごしですか。発売当時にやろう!と思ったのですが恐れ多くて一度引っ込めた案件、やはりどうしてもやりたくなって出しちゃいました!『ジャム』レビュー!

  『ジャム』がめちゃめちゃいいアルバムだって話をとにかくしたい。もしかして、ジャムを聴いたらあなたの人生が今まで以上に輝くかもしれないよ!

 

 

1.罪と夏

  再生ボタンを押した瞬間にラジオみたいなちょっとザラついた音質で曲が始まるのが最高。これから夏が始まるワクワクと、アルバムを再生したときのワクワクが、どっちもギュギュッと詰まっている。これは絶対にアナログ盤じゃなくてスピーカーがいい。レコードに針を落とすしっとりとしたドキドキとはまた違う。再生の▷ボタンを押したい。
  来たぜ夏 からクラップとドラムだけだったのに、熱っちゃちゃちゃちゃ☆からぶわ〜っと一気に音楽が広がる様子は、まるで扉を開けて7人が太陽の下へ駆け出して行くかのようだ。

  歌割は横すば→丸雛(安ハモ)ときて

「・・誘ってんじゃね?」やんちゃユアボディ どうせならばビーチに踏み出せ

で満を持してtornがズイズイ前に出てくるのも良い。お顔がシュッとしてるお兄さんたち、この台詞がまあ似合う。

  Aメロ→Bメロと明らかに賑やかさが上がってガヤも増えていて、そのまま一気にサビへ!と思いきや“真夏の俺らは罪罪罪なのさ”で一回クールダウン。この焦らしによって言いたいことがより引き立ち、聴いている側が「ウワ〜〜〜罪だ〜〜〜><!」となる。メリハリも効くからサビがより上に突き抜ける。

  サビは安田さんの上ハモが素晴らしい。ラララソファ#ソファ#ファ#ララドラ(「思い出」じゃなくて「好き」になってよ の部分)が特に秀逸。「陽炎 燃えろ 一夜限りの」の安田さんもとっても仕事人なので是非注目して聴いてほしい。こうやって完全に1人ハモリに費やしても人員が沢山いるから主メロが痩せ細らないのは人数が多いエイトの強み。*1
  高音の安田さんばかり褒めたけど、そんな彼の上ハモがふわふわ浮かないのは大倉くんのオクターブ下の主旋律ユニゾンのおかげ。彼によって厚みがグッと広がるし、地に足がつく。


  最初の音質や1版Aメロ前のトゥルトゥルトゥルトゥルっていうギター(伝われ)なんかはこち亀OP『夏が来た!』でも使われていて、きっとこのサウンドには夏を感じさせる要素が詰まってるんだなと感じた。

 

 

2.今

  この曲は『源さんの音楽をエイトがやったらどんな化学反応が起こるか』っていうよりはアイドルに楽曲提供する、っていうところに重点を置いて、源さんがアイドル側に寄せた、アイドルソングが出来上がった。おそらく、というか間違いなく菅野よう子さんの編曲の力も大きい。
  とにかく単純明快!覚えやすいメロディ!だって

夢の中から 水の底から

手を伸ばし君の手のひらつないだ

がドレミファソラシドレドシラソファミレになってるんだもの。*2この世にドレミファソラシド、よりキャッチーで分かりやすいフレーズって存在しないと思う。多分。

 

  こんなに楽曲は源さん本人のものと雰囲気が違うけど、ちゃんと源さんの匂いがするのは間違いなく歌詞のおかげだと思う。まずタイトルが“今”なのがめっちゃ源さん。名詞1このタイトル多いよね。大流行した“恋”もそうだし“化物”とか“ギャグ”とか。歌詞のワードにも“水の底”とか、“今”を繰り返したりとか、あ〜聞いたことあるある!

いつまでも此処に居たいけれども 旅立つ夢を見てしまったことを

  今いる環境に身を委ねてぷかぷか浮かび続けることは楽チンだけど、エイトはそんなこと望んでいなくて、今よりももっと!もっと!というハングリー精神を感じる。まだ自分たちなんて、という思いが強いように思う。それがきっと“旅立つ夢を見てしまった”ということなのかなという解釈。

 

  今はここで終わらないから、『そして生活はつづく』から、ジャン!って歯切れよく終わるんじゃなくて、ピーンとはった音が向こうへと抜けていく。それは未来へと続く一筋の光みたいだ。

  

 

3.DONAI

「俺の好みのYouとYou」

を歌う横山“裕”さんで掴みはオッケー完全優勝。いつかのレンジャーの「きみからYouへ」を思い出させる。

  横山さん得意のがなりでド頭にインパクトがしっかり残ってるし、2こめのYouでピッチを曲げ、音を切る瞬間もグイッと上ずるのが最高。そこからシュッとしたお兄さん①(大倉くん)が

「いや あの子俺に夢中」

って自分の格好よさをしっかり自分で把握したパートを貰っているのが最高。さらにシュッとしたお兄さん②(亮ちゃん)が

「どきな 主役が総取り」

で掻っ攫っていくのも最高。さすがジャニ勉のロッカーゲームで「一番イケメンなのは?」が成功した男なだけある。*3

  最後の村上くんの

ほら 良い顔してる

はTV初披露の時点でCDの何倍も良くて、毎回最高のポテンシャルが発揮されているこのパート、音楽が止まってハッとした瞬間に間髪入れずに差し込まれるハスキーボイスがまあ色気たっぷりで!!!安田さんの同パートはちょっとチャラさが残っていて、それはそれで良い。

 

  後に出てくるJAM LADYの“Ha〜アカンて”周辺や、Trafficの“目がさめるような 美人なお姉さん”、そしてこの曲の「マチガイの恋でも素敵やん……?」と、これでもかというくらい女性に目が眩むパートを任されるすばるくんも興味深い。ファンとかメンバー含む関係者の中はこのパートすばるくんにピッタリだなあと思うけど、パブリックイメージ絶対違うと思うんだよなあ。面白いな。

 

  なんとなく、関ジャニ∞LOVEマシーンだなと思った。娘。なら同じ土曜の夜が舞台の泡沫の方が良いかなとも思ったけど、老若男女問わず巻き込んで踊ったり、時代の感じがLOVEマシーンの方が合うかなと思った。

 

 

4.なぐりガキBEAT

  スカミュージックのリズムを使いながらも、どこかアイドルソングっぽいのはユニゾンが多めなお陰なのかなあ。 

  スカミュージックとかけて“スカしていたって”や、映画を意識して疫病神というワードも入っていたりする遊び心もある。

 

  ブラスアレンジの山森大輔さんはROCK'A'TRENCHのボーカル。メイちゃんの執事の主題歌のMy Sunshineとか懐かしい !聴いてた !この曲もジャンルはレゲエ・スカ。そういう音楽のジャンルが得意な方なんだな、きっと。 ちなみにBaby BabyやCan't U see?の楽曲提供もしてくれている。

  そんなブラスも勿論格好いいけれど、ベースもなかなか面白いラインで動いている。A・Bメロ・サビでほとんど同じ動きなのだ。違うフレーズが乗ってるのに !綿密に練られた構成なんだろうなあ。

 

   歌詞は関ジャニ∞7人のことを書いているわけではないのに、まるで当て書きをしたかのようにしっくりくる。

どこまでも付いて来る うまく巻いてもまた湧いてくる

のパートを与えられた、いつもちょっかいを出しあってキャッキャ言ってる倉丸。

夢も共倒れ

と顔を見合わせ互いを指差し歌う、同い年のヤンマー。

世界を変える

 と一人ずつ手を挙げて歌う三馬鹿。そしてみんなで横並びで打点の高いキックをキメながら

あとはドアを開けるだけ

だなんて、なんだかとてもドラマチックだなと思ってしまう。

 

  殴り書きビートを強く突き上げろ!と今年の頭に歌って、次に出すのがアルバム『ジャム』なの、伏線回収みたいで好きだな。

 

 

5.夢への帰り道

  この曲には幼さも、大人っぽさも両方感じた。バラードでしっとり歌い上げるんだけど、大人になりすぎた哀愁というよりはまだキラキラしたものが見える。そんな気がする。
  ひらがなって日本特有の表記で、丸みが多いから柔らかく見える。そんなひらがなを表現するような歌い方にみんななっていて面白いなと思った。
  丸ちゃんはもともと声質が柔らかいけど、楽曲最初の掴みを担当するにあたって、かなり慎重に音を置きにいってるなという印象。
  よくおもった みのえがお 等ちょっとキツく聞こえがちな音が多い大倉くんパートは鼻の辺りから声出してる音がする。あえて鼻の辺りを意識することによって、発音がそのまま抜けてキツく聞こえないようにしているのかななんて思ったり。あと、きみのなみ のビブラートがとても自然で綺麗。大倉くんは特にバラードや音域が高くなると甘美な響きになる。クセがなくて、すごく聞きやすい声だな〜と感じる。
  亮ちゃんは普段子音がしっかりしてるからかなり歌い方作ってるように聞こえる。「道」なんかとても顕著で、「ち」の音をウの口で発音してるのが聞いただけで分かる。あと亮ちゃんも鼻から抜ける音を多用するタイプ。「帰り道」の「かえり」がかなり音のつながりを意識してるな〜と前々から思っていたけど、いとしのエリーの「エリー」部分に少し通ずる歌い方だなと思った。どっちも音が下に跳躍するし(音の幅もそこそこ同じくらいだった)、少しrの音みたいな巻き込む感じだからかなあ。そこを歌うにあたって、本人はいとしのエリーを意識してることはきっとないと思うけど。
  横山さんの歌声はやさしいというか幼い。歌い方じゃなくて、声がすごく若々しいのだ。最年長にして、歌声は少年のようだ。

かくしておこう いまはいわない

の14文字に、少年の青春時代のような煌めきが感じられる。横山さんの声だからこそ表現できた歌割だな。
  安田さんは最初の「て」が結構力強いけど、キツいのではなくて言葉に説得力としての重たさを感じさせる強さ。
それが重圧になりすぎないのは“ふるなら ハグ”の辺りまでのおかげかなと思う。わたしが大好きな安田さんの、喉を開いていて深みのある、温かくて優しい、包み込まれるような声。「ハグ」の ハ 、干したてでお日さまの温かさが残る柔らかいお布団みたい。なにより

てをふるなら ハグしてほしい

って言葉、当て書きかと思うくらい安田さんっぽい。
  村上くんは最初に書いた大人っぽさと子供っぽさを持ち合わせるこの楽曲の、大人っぽさ担当。村上くんのパートと一緒にヨコの話もさせてほしいのだけど、7人のなかでヨコヒナは割とフラットに歌っているように聞こえる。バラードって歌ってる本人はすごく気持ちが良いからビブラートをかけたり、少し後ろでテンポをとったり、溜めたりしがちだ。もちろんそれも美しいのだけれど、そればっかりになってしまってもくどい。そのバランスを取っているのがヨコヒナ。そして大人っぽさと幼さで対に立って他のメンバーを包み込んでいる。ああ、なんだかMCでよく見る図だなあ。
  すばるくんもこんな丸い歌い方するなんて知らなかったな。引き合いに出すのが他グループになっちゃうけど、この曲の歌い方に関してはまっすーの丸い響きに方向性が似ている気がする。アとエの段で舌がかなり手前側にあるような感じ。

  BEGINの楽曲はそんなにたくさん知らないけど、涙そうそう海の声・夢への帰り道と聴いてみて、どれも沖縄の海のようだなあと思った。何が言いたいのかは楽譜を見ればわかるからちょっと見てほしい。

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  これは夢への帰り道のサビ冒頭。まるで寄せては返す波のようなゆったりとしたメロディラインの曲線。あともう一つ気がついたのは、一曲通して♭や#、つまり黒鍵がとても少ない。ということは基本的に素直な、音の聞こえが明るい曲になる。
  そんなことを書いていると「じゃあもうエイトじゃなくてBEGINの曲じゃん」と言われそうだが、それは違う。すばるくんのブルースハープの音が、エイトの香りを運んできてくれる。エイトの曲だなと分かる。
  派手なことをやっている楽曲ではないけれど、色んな面白い発見が詰まっている、素敵な楽曲だなと思った。

 

 

6.えげつない

  0コンマ何秒で分かる、岡崎体育節。浪花いろは節・大阪ロマネスク・関風ファイティングetc…挙げ始めたらキリがないほど大阪の歌を歌ってきた彼らに、まだ“偏西風”っていう表現があったか !やられた!という感じ。

  イントロが流れてキター!と思ってるといつの間にかラップバトルに辿り着いている。おそるべし疾走感。ちゃんと気流を掴まないと乗り遅れてしまう。

 

  ラップバトルは物凄く韻を踏みまくってるわけではないけど、横山さん→すばるくんの

初対面の人の前では 静かにしはる

お前の名前は 渋谷すばる

にシビれた〜!!甘えん坊と尼へGO!もいいよね。

 

  アルバムの中に偏西風の如く吹き抜ける4分57秒。体感速度が速すぎてアルバム通して聴いていてもおかわりしたくなる楽曲。

 

 

7.パノラマ

  バンド色が強めなこのアルバムにおいて「関ジャニ∞っていうアイドルやらせてもらってる」の要素を残してくれているのがパノラマ。というのも編曲を担当している野間康介さんは関ジャニ∞との縁も深く、これまでにもたくさん編曲をしてくれていた。ローリング・コースター、エネルギー、バリンタン、WASABI etc…わたしの好きな楽しいアイドルソングばっかりだ !

  そしてさらに、作詞作曲のSHIKATAさんも、ここ数年数多く関ジャニ∞の曲を手がけてくれている。Sorry Sorry love、フローズンマルガリータ、The LightやSteal your loveといったユニットまで !こちらもまた名曲揃い。

 

  ギターの早弾きや効果音のようなフレーズ、打ち込みによる楽しい音がたくさん鳴っていて、幸せ感がすごい。この世界では絶対誰も不幸せにならない。(?)

 

  生身の人間だったらクサくて恥ずかしくなっちゃうようなアツい言葉も、アニメの主題歌として、アニメの主人公が歌の中の主人公として聴き手に消化されれば比較的マイルドに吸収できる。  

 

  バックグラウンドの話をさせてもらうと、パノラマが好きで好きで好きな関ジャニ∞(特に横すば倉)がタイアップを掴んだのが嬉しい。良かったね…!

 

 

8.Never Say Never

  あ~~~~~~~天才だ!自担が天才!!!みんな韻が、韻がって言うけどじゃあどれだけ韻踏んでるんだ、ってことでまとめました。手書きで荒いし、何よりそういう道の人が見たらそこじゃねーよ!みたいなのもあるかもしれませんがド素人が頑張ったってことで許してください !

 

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  赤いところは全部1番と2番を対にさせて韻踏んでるところ。逆に韻を踏んでないところを探す方が難しい。個人的に特に凄いなと思った部分は
・1番の“ひたむきに挑み”が2番では“波乱万丈”になっていて「?」と思ったらすぐ後の“果敢に行動”“盛んに光耀”と韻を踏んでいたこと
・サビ前の“可能性”“辿るべき”がその2語でもきちんと韻を踏んでいること、そしてあんまり関係ないけどアオウエイ、と母音に被りがないこと

の2つかなあ。

  

  夢への帰り道でも同じこと書いたけど、Never Say Neverもあまり黒鍵を使わない。明るくストレートに、思いが伝わる。例えばサビの終わりの“作戦通り”のフレーズがCの和音でハマっている。これは鍵盤のドミソ。幼稚園などでお辞儀のときの和音にも使われている基本中の基本である和音。伝えたいことはストレートで明快!だからあれだけ色々な音が鳴ってる中でも芯が通った音楽になるんだなきっと。

 

  これは確かにスパイダーマンの主題歌として書かれた楽曲だけど、スパイダーマンの話の内容などには特に触れているわけでもない。(HERO というフレーズはあるけれど、誰でもヒーローになれる、というような解釈なのでスパイダーマンに限った話ではない)しかし最初のテンポが上がる直前と最後の最後にある「ピシュッ」という音は間違いなくクモの糸を出すときの音を連想させるもので、そんな音遊びをちょこっと入れてるのも素敵。

  Are you HERO?と投げかけて始まり、怒涛の言葉の羅列で励まし、最後にI'm HEROで終わるのが1つの物語としてきちんと成立している。

 

 

9.侍唄(さむらいソング)

  すごい私情だけど、このアルバムに収録されて、正確にはCDTVのアレンジを聴いてやっと好きになれた一曲。頭のところを亮ちゃんが弾き語りするの、すごく味があって好き。正直なところ、発売当初は良さがあまり分からなかったんだけど、何度も聴くうちに感じ取れるものは前より少し多くなった気がする。

  帰路で、夕焼けの見える電車で聴きたい一曲。 メトロック、本当に美しい情景だったんだろうな…

 

  曲の雰囲気に合った丸く柔らかく歌う亮ちゃんに対し、圧倒的な存在感で入ってくるすばるくんのパート。歌声は高めだけど喋っているときの声は低いから(スバラジとか)、もっと綺麗に低音出そうなのになあと思ったけど、あえて荒っぽく歌っているのかなと思った。

僕はサムライだから 迷いなど生じない

 という宣言のような、自分に言い聞かせているようなその言葉を歌うにあたって、綺麗な深い低音よりも、少々荒い方が味が出る。そういうところの加減も含めて、本当にすばるくんは歌が上手い…

 

  亮ちゃんもこの曲にこもる温かい愛のようなものを表現する力を持っていて、ああ、関ジャニ∞のメインボーカルは渋谷すばる錦戸亮なんだな、と思った。

勿論関ジャニ∞全員がボーカルだし、みんなの歌にそれぞれいいところがあるのもよく分かっているけど、それでもこの2人が核の部分を担っているのだと強く感じた。

 

10.S.E.V.E.N 転び E.I.G.H.T 起き

  関ジャニ∞の音楽を“エイト(の)ビート”と表現したセンス !!!エイトビートなんて、音楽の話をする上で何の特別性もないワードなのに、関ジャニ∞を前にすると特別な意味を持つのが素敵。なんで今まで気がつかなかったんだろう。

  

  この曲はおそらくニ長調で描かれている。ニ短調は#が2つで明るい、軽い音になるのが特徴。だから明るい底抜けたサウンドになる。しかもフレーズが同じ音の連続だったりして動きが少ないから分かりやすい。「世界に羽ばたく」とか全部同じ音だからね。

  ニ長調で描かれたジャニーズ楽曲はER、ズッコケ男道、バリハピ、フラワー など。こう並べてみると確かに明るいサウンドが多い。

  

  大迷惑しか知らないわたしがこの曲を「ユニコーンっぽい」なんて言うのはとてもおこがましいとは思いつつ、でもすごくユニコーンっぽいなと思った。

  世界に羽ばたく〜の辺り以外は英単語をアルファベットに分解してひたすら言っていたり、あーそのーとかしか言っていない、少しおフザケの入った楽曲。でもそのおフザケが効いているのは間違いなく邦ロックド直球の格好いいインストのおかげ。格好いいレールの上でふざけるからこそ、加減の効いた良いものになる。

  C&Rも多いから、絶対ライブで盛り上がる一曲。

 

 

11.NOROSHI

   そもそも関ジャニ∞のバンドという側面が再び着目されるようになったのはこの曲がリリースしてからだったように思う。ファンからしてみれば毎ツアーでバンドを披露していたけど、一般層から見るここ最近の関ジャニ∞はがむしゃらや前向き、罪夏などアイドルソングが多かったから、そういう意味でもインパクトは強烈だったのではないかな。そんなある意味ターニングポイントにもなった楽曲のタイトルが奇しくもNOROSHI(狼煙)。

 

  最近の若者の風潮の痛いところを刺すような鋭い歌詞。アイドルでも歌えるグループ限られてくるなあと感じた。男、ではなく“漢”という表記が似合うような、男臭さ、義理と人情!(気分は達筆)みたいなグループじゃないと消化しきれない。

  そんな歌詞に合わせて、吠えるような、“音程の安定感”ではなくパッションを第一優先したような歌い方をしている。わたしはこういう歌を歌う人間が本当に好きだ。素晴らしい音程感、狂いのないリズムが“歌が上手い”と賞賛されるなら、この世で最も上手いのは間違いなくボーカロイドだ。どの音をとってもピッチのズレは±0、リズムだって寸分の狂いもなくハメることができる。でもパッションだけは、人間じゃないと出ない。そこに人間が歌う意義があると思うし、そこに価値をきちんと見出したい。

 

  そしてバンドのサウンドが堪らなく格好いい !ベースソロからキーボード、トランペットの見せ場もあって、メンバーの中では遅咲きの彼らが率先して曲を進めていく図も素晴らしい。

サビ終わりの

君の踏み出した先にある

は全員リズム隊も含めてユニゾンで(ドラムは一小節分四つ打ちだけど)一番言いたいことを全員で足並み揃えて伝えていて、曲としてもまとまりをもっていて最高。

 

 

12.青春のすべて

  とにかく歌割が美しい !この曲は“青春のすべて”というタイトルだけど、決して若者が「青春とは!!!」と歌う曲ではない。大人になった主人公が青春を懐かしむ歌だ。だからこそ、年功順に歌割が進んでいく。じゃあ何故最初のパートに最年長横山さんがおらず松原.なのか、それは夢への帰り道でも触れたけど横山さんの声質が若い印象を与えるからだと思った。松原.の声で懐かしむ空気を作りあげる。そして受け継ぐのが丸ちゃんと横山さん。

笑顔はすぐにつくれるのにさ なぜなのかな うまく泣けない

この二人、ちょっと不器用な歌詞がすごく似合う!と新たな発見をした。そして続くは亮ちゃん→安田さん→大倉くん。ここの大倉くんのパートが涙が出るほど美しくて。冬の景色の中に溶けていってしまうのではないかと思うくらい儚くて。いつもは「関ジャニ∞の歌高くて歌われへん」とか言ってるけど*4ファルセットすっごく素敵……こんなの惚れちゃうな。

   同じフレーズを亮ちゃんも歌っていて、ファルセットも綺麗なんだけど、わたしが見たライブではここ地声で歌っていて。これだけ音源の感想ではないのが申し訳ないんだけど、その地声で音域ギリギリを攻めてるのがまさに

だからこそもがいて あがいて

 で、凄く良かった…音源より聞いてる回数はるかに少ないのに地声が耳にこびりついているくらい強烈で、とても好きだったから盤に残るといいな。

 

  インストに関してはザ・良い曲。これも水野節かな。彼の作るバラードは結構水野さんの色出るなあと、いきものがかりの音楽を聞いていても毎度思う。合唱曲とか吹奏楽バージョンに編曲されがちなタイプの曲。というのも打楽器の使い方が上手いんだなと思った。
イントロを一度盛り上げて、Aメロに入る前から拍子打ちでちょっと落ち着かせる。『旅立ちの日に』みたい。
Aメロからの4拍目のスコーンっていう音、控えめに鳴るクラベス、サビ前のティンパニと、上手く説明できないけど良い曲だな〜となる要素が詰まってある。
思い出は時間が経つごとにどんどん美しくなっていく。度々鳴るウィンドチャイムはそんな過去の煌めきを感じさせてくれる。

 

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13.生きろ

  まどろっこしい、遠回しな言葉を使わず、ちょっとこっちが恥ずかしくなるくらいド直球な歌詞。余計なものを削ぎ落とした分かりやすいサウンド。それもなんだかとてもすばるくんらしいなと思う。そしてエイトのアツい男臭さがとてもマッチしている。

  ユニゾンで始まり、ソロパートが続き、サビもユニゾン

あなたを生きて

  というおそらく1番伝えたい言葉に差し掛かった瞬間にハモりを加える。ここも今回のアルバムではお馴染みのCの和音。この和音の話はNever Say Neverでしたから割愛。

 

  レコーディングした音をあまりいじらず、生音収録っぽいのがこれまたいい意味で手を加えてないストレートな音でとても味がある。ソロで出したカバーアルバムも、Answerでもこの形がとられているからすばるくんのこだわりなのかな。作る楽曲の持つ空気感ととても合っていて好き。

 

  決して長い曲ではない。たった3分半。でもその3分半の中に、思いがギュッと詰まっていて、短さを感じさせない満足感がある。

  

 

14.JAM LADY

  だからウチの安田さんは天才だと何度言ったら!!!最初に聴いた時は「?!」ってなったけど、確実にジワジワ虜にさせる魔性の曲。

  これも韻をどれだけ踏んでるのかやった…と言いたいところなんだけど、安田担のfukaさんが細かく丁寧にPCで見やすくやってくださってるのをTwitterで見たのでわたしの出番はない。是非fukaさん(@fuka911)のツイートを見てほしい。

こんなひっそりやってるブログになど足を運ばれないかとは思いますが…勝手に名前だしてすみません(><)いつもツイート楽しませていただいてます…!

 

  ちなみに一番凄いなと思ったのはタイトルのJAM LADYに対する初っ端の”Are U ready?”、とそれに答える“多分ヘーキ”。天才の所業。

 

  有料コンテンツ(ツアーパンフ)から得た情報なので詳しくは言わないけど、この曲にはどうやら裏テーマがあるらしい。わたしみたいな凡人の脳みそではきっと一生分からないし、彼自身もそれを公表する気などさらさらない。だからわたしは彼の手のひらで転がされながら、頭をカラッポにして楽しむ他ない !

 

  一人一人見せ場があって格好いい〜〜〜!明日のことは気にしな〜〜〜〜い !!!!!!

 

 

15.Traffic

  JAMっていうアルバムタイトルを聞いてTrafficを持ってくる亮ちゃんのセンスには相変わらず信頼しかない。Trafficで止めるところも推せる。
 イントロが超錦戸亮。アコギ鳴った瞬間「あ、亮ちゃんだ」と思った。そしてクレジット見たらレコーディングもやっぱりギター亮ちゃんが弾いていた。なるほど、だから余計強く感じたんだ。

   間奏のオケがギャンギャン鳴らす部分はThe BeatlesのA Day in the Lifeのオマージュだと本人が言及している。恥ずかしながらはじめて聴く楽曲だったけど、二つを聴き比べて、Traffic間奏最後のタンバリン?のチャリリリ、チャリリリという音は、A Day〜の目覚まし時計を連想させているのかなと感じた。このオマージュを「入れたかった」と言っていたから前々から構想練ってたのかな。麻薬に溺れてゆくかのようなA Day〜よりはもう少し交通整理されているけれど、渋滞のギュウギュウに車が並んでいる様子はきちんと見えるゴチャゴチャ具合で、これまた絶妙だなと思った。

 

  ソロパートは安田さん、亮ちゃん、すばるくんが圧倒的に多い。まあ見事に耳に残る、いい意味でクセのある声を持つメンバーがしっかり揃っている。かなりエッジの効いたギターやピックスクラッチに負けないパンチのある声が欲しいとなるとこのメンバーになるよね、分かる。

  そもそもAメロ一発目に「ダラダラ」なんていう濁る音を持ってくるのもかなり挑発的だし「ダラ」の2音でインパクトつけたらすぐオクターブ下まで跳躍するのがヤバい。音源じゃないけどここぞとばかりに安田さんが巻き舌しまくるのもヤバい。

 

 

13(A).ノスタルジア

  イントロはメロディーが断続的で、なかなか前に進まないもどかしさからノスタルジーを感じる。それでも息苦しすぎないのは底のピアノのロングトーンが成すゆったりした流れ、レレドレレドというちょっと硬質な、でもキラッとした音色を持つ楽器のサウンドのおかげかな。
インストはとってもシンプル。クラップやタム、ドラム等いろんな楽器も入ってくるけど、ベースが基本これ。

 

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  基本ずっとこれで動くのにDメロ?でガラッと曲調が変わってダイナミックになり、歌詞の

今だって僕らは 夢見た時のまま 何処へでも行けるさ

が説得力を増すように感じる。


「逃れられないメビウス」という歌詞がある。これはメビウスの輪(帯)であると思われる。文学作品においてメビウスの帯はしばしば無限の繰り返しを比喩的に表すものとして用いられる。メビウスの帯は1周して戻ってくると向きが逆転しているという性質を有していることから、主人公がなんらかの経験を経て考えをあらためて過去(あるいは元いた場所)に戻る際の比喩として使われることもある。(Wikipediaより抜粋)
  またこのメビウスの輪、置いておくと∞のマークになる。そこまで意図して書かれたかどうかは分からないが、美しい偶然だなと思う。

  主人公は

出逢う“ひとつだけ”を信じてる

ところで終わっていて、出逢ってはいない。だからこそ曲が綺麗な和音でではなく、ドとレを微かにぶつけて歪みを残している。最後まで蔦谷さんがニクい !

  わたしは安田さんのサビがめちゃめちゃ好きだ。それまで普通になんとも思わず聴いていたのに、「変わって」を聴いた瞬間ハッとした。この瞬間にノスタルジアが大好きになるくらいガツンと来るものがあった。切なさを、愁いを感じる、でもグラグラふらつかず、“強がって”いるような歌い方。多彩な歌い方ができる安田章大さんの、この曲に対する歌い方の答えが堪らなく好きだ。

  あと、大倉くんの

忘れ物のような響き

もとっても伸びがよくて好き。

 

 

13(B).Answer

  ユニット決めで三馬鹿と年下組は?って流れになった時「それええんちゃう?それやったら三人でやる意味もあるし」って言う横山さんだったり、「3人の言葉を絶対入れたかった」っていうすばるくんだったり。それぞれの3人という括りへの特別な思いが言葉の端々から伝わってくる。昔からのファンの方は待ちに待った、焦らされまくってやっと叶った三馬鹿ユニットで、今までやってきたことへの“Answer”を、ポップな曲調で出してくれるなんて物語として完璧。(この楽曲の対になるかのように年下組が“あの場所”への郷愁をまとっているのも完璧)

   3人の歌、というよりも自分たちと同世代の人たちの〜みたいなことをすばるくんは言っていたけれど、こんなのどう考えたって三馬鹿のストーリーに重ねてしまう。だからわたしはあまり歌詞については言及したくない。第三者が介入できない三馬鹿の世界がそこにはあると思うし、介入するとしてもそれはわたしの役目ではないなと思っている。

 

  すばるくん本人からも「キーはかなり高めにしている」(ニュアンス)と語られている。確かにサビ頭などは男性の音域からするととても高い。それでもパキンとしっかり当ててくるから聴くたびハッとする。特に落ちサビのヨコヒナ。ギリギリのキーは頑張らないと出ないからというのもあるけど、 あのパートからは物凄く気迫を感じる。ブレス音もかなりしっかり拾っていて、パワーがあるなと感じた。

  村上くん発信の四字熟語を、エフェクトかけまくって効果音として使っているのも面白い。

 

  色んなことを超えてきた、その過程はもうリアルタイムでは追えないけれど、次のステージへと歩みを進める彼らのこれからが楽しみでしょうがない。

 

 

【総括】

  『ジャム』は、関ジャニ∞の今を、等身大をありのままに表したアルバムだなと思った。アルバム表題曲である『今』は勿論だが、『侍唄』から

時を超えて 今

そしてNOROSHIから

行くべき“未来”は そう、君の踏み出す“今”が拓く

という風に 今 という言葉が頻出する。さらに、

一筆で描いた二つの円は大団円になって  乱気流を超えていくんだ

「これまで」を忘れたいわけじゃない

「これから」を思って生きたいんだ

 

など、前を見てもがき、進んでいくようなものばかりだ。これは音楽でのセッションを通じて、言葉を交わして、楽曲提供者たちが関ジャニ∞と深いところで分かり合えたということの証明ではないだろうか。だから色んな人のカラーがある楽曲が集まっても、結果「関ジャニ∞らしい」ものになったのではないかなと思う。

 

 

ジャム (初回限定盤A)(DVD付)

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ジャム (初回限定盤B)(DVD付)

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ジャム(通常盤)

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  ツアーも残すは福岡公演2回。最後の最後まで怪我なく、病気なく!7人やスタッフさんが元気に最終公演を終えられますように !!!

 

 

 

*1:最たる例はRAGEのサビ

*2:正確には前半がミからはじまるホ長調(#4つ)の音階で、転調してからはファからはじまるへ長調(♭1つ)の音階だよ

*3:ロッカーの中に一人ずつ入り、お題に対してコレは自分だ!というものがあれば飛び出て、メンバーの中で1人だけ出られれば成功というゲーム

*4:7人だけの新年会2017