ジャニーズの変拍子楽曲を褒めよう

 

わたしは変拍子楽曲が好きだ。

 

変拍子とは5拍子や7拍子などあまり使われないような拍子のこと、もしくは1曲の中で拍子がコロコロ変わることを指す。どちらもワンツースリーフォーという単純なカウントではない。正確に言うと、前者を変拍子、後者を可変拍子という。

 

わたしは変拍子の、拍子・リズムという時間の枠組みが多様に変化することで音楽が大きくうねる様が好きだ。クラシックの中だと拍子が変わることはそうめずらしくはないが、ポップスは歌詞の入れやすさや踊りやすさを考慮して(なのかは知らないけど)4拍子がメジャーである。

そんな風潮がある中で、変拍子にトライした面白い楽曲はこの世にたくさん存在する。 そんな遊び心を取り入れた作品をジャニーズ作品に絞って褒めちぎるためだけにこのエントリーを書いた。

 

 Top Of The World / SMAP 

国民的アイドルど真ん中だったSMAPが“世界のトップ”というタイトルを掲げながら、決してメジャーとは言えない8分の7拍子を歌うという挑戦的な姿勢にシビれる。作曲はMIYAVIさん、そして作詞はいしわたり淳治さん。

NEWSの増田貴久さんの2012年のソロ曲PeekaBoo…でも使われていたシンコペーション*1的なリズムが拍を取りづらくさせるから、いきなり7拍子で曲が始まっても違和感を感じさせない。というより、拍子という概念を聞き手に与えない。*2

7拍目でバスドラムみたいな打楽器が16分音符を刻むから(〜4小節目まで)そこでフレーズが切れるんだなという予感はしつつも、4カウントに慣れている身体は次の小節に入る瞬間につんのめった感じがする。

第一線を走りながらもまだ上!まだ上!と渇望する彼らに(曲に)背中を押されるがままに進む。そしてサビまでたどり着いた瞬間に「Oh Oh Oh Oh」と高らかに長いフレーズを歌い上げるのが本当に格好いい。

 

 

Monster / 嵐

基本ずっと4拍子だけれど、間奏でワルツのリズムになる。ワルツはヨーロッパ発祥だ。それは馬の歩くリズムが3拍子であることから生まれたとされている。*3ではどうして間奏で急にワルツが組み込まれるのか、それは“ゾンビ”や“モンスター”といった文化が日本にはないからだと思う。日本は火葬文化だからゾンビ系のおばけは出ない。*4ずーっとワルツにすることで世界観を凝縮するのも素敵だけれど、一部分だけアクセント的に使われることでフッと彼らの世界へ迷い込んでしまったような、ひとときの夢を見ていたような気にさせてくれるようで好きだ。今宵の闇へわたしを誘ってくれる気がする。

ちなみに、関ジャニ∞安田章大さん作詞作曲のDye D?も間奏で犬の遠吠えを皮切りに3拍子へ突入する。ヴァンパイアも日本文化じゃないからね。

 

 

・少年隊 / 仮面舞踏会

正直、仮面舞踏会のイントロを褒めちぎりたくてこのエントリーを書いた。

この曲のイントロは5+5+5+4の計19拍で出来ている。5拍子の部分は3拍目が休符になっていて、これを詰めて4拍子にしてしまうととてもダサい。せっかく印象的なフレーズなのに、気を引くポイントもなく音が流れてしまってインパクトに欠ける。どこか間の抜けた音楽になってしまうだろう。

頭はアタックの強いバスドラムとシャーンという響きの鳴る楽器に任せて、タリラリラリラ!というエレクトリックな音が駆け抜ける。このタリラリラリラ!も裏拍から始まる。抜かりない。休符で一瞬ハッとしてから、ブラスとベースの四分音符が地に足を下ろして2つ鳴る。休符が非日常な世界へと足を踏み入れる緊迫感を醸し、この5拍子という聞き慣れない拍子の絶妙な違和感が怪しげな夜の仮面舞踏会の雰囲気を想像させる。

こんな格好いいイントロを書いたのは、超超ヒットメーカーこと筒美京平先生である。

さすが、としか言えない。古今東西のジャニオタの血を一瞬で沸騰させる魔力を持ったイントロだ。ご冥福をお祈りします。

 

 

・NEWS / チュムチュム

民族音楽変拍子が多く使われている音楽ジャンルだ、というのは以前加藤さんがクラウドでも語ってくれていた。

インド音楽変拍子のルーツを調べてみたけど、結論から言うとよく分からなかった。ただ、「ターラ」というリズムサイクルの概念が存在することは分かった。一定のリズム周期であるターラに乗って流れるメロディーは常に次のリズム周期の起点で終わるようにできているらしい。このリズムに対する考え方が仏教やヒンドゥー教の輪廻思想に類似するような点があるかもしれない、らしい。変拍子関係ないけど。
話を戻すとチュムチュムのタイプはコロコロ拍子が変わる、と言う意味での変拍子だ。

小山さんの「チュムァ!」までの拍子は4+3+3+3+4+4+2。エンヤーエンヤーエンヤーアーアーアーが4拍子、インディアンなメロディーのところが3拍子、小山さんの「チュムァ!」のために2拍。何度だって言いたい、小山さんの「チュムァ!」のための2拍。微妙にイントロの間が持たないから台詞を入れようかな〜なんて考案されたのではない、「チュムァ!」を言うためにわざわざ足された2拍なのだ。チュムチュムの楽曲中で2拍子はこの1回だけである。

落ちサビ前のアーーアイヤーアアーのところは「チュムチュム アチャチャ!」だけ4拍子が置かれているが、その4拍に強烈な3連符の打楽器が当てられていて、4拍子が入る唐突さを柔らげている。そしてその3連符もアクセントのつけ方を3連符のまとまりにしていないため、拍子感が分かりにくくなっている。分かりやすく言うと、「なすびなすび」(A)と「なすなすなす」(B)だと強拍になる「な」の位置が変わるよね、という話。分かりやすくなったかな...?

 f:id:n__kgi:20171221215244j:image

もしあそこが3連符がじゃなくて4つ打ちとかだったら確実に盆踊りになってしまう。あまりにもダサい。ありがとう3連符。

 

シングルカットされる曲でもPPPHを使わない、いわゆる王道アイドルソングではないものが増えてきていて音楽的に聴くのがとても面白い。

ダンスも合わせてパフォーマンスとしている“アイドル”というジャンルだからぐちゃぐちゃの変拍子の曲リリースは難しいのかもしれないけど、聴いていてカウントが1発ではつかみきれない難解な曲をサラっと歌い上げるアイドルをもっと見たい。

 

なんか面白い変拍子楽曲があればマシュマロとかで教えてほしい!おしまい

 

 

*1:https://ja.m.wikipedia.org/wiki/シンコペーション

*2:ただ、PeekaBoo...は普通の4拍子である

*3:おそらく諸説ある

*4:だから日本のホラー映画は怨念系とか湿っぽいものが多い